

なるほど家づくり
地鎮祭と上棟式|費用の目安、当日の流れ、着工から引き渡しまでの過ごし方
契約と着工の間に、地鎮祭という行事があります。上棟のときには上棟式を行うご家庭もあります。「必ずやるものなのか」「いくらかかるのか」「何を用意すればいいのか」——初めての方には分からないことばかりです。ここでは、この2つの行事と、着工から引き渡しまでの過ごし方を整理します。
地鎮祭とは何か
地鎮祭(じちんさい)は、工事の着工前にその土地の神様に土地を使わせていただくことを報告し、工事の安全と家の繁栄を祈る神事です。「とこしずめのまつり」とも読みます。神主を招いて行うのが一般的で、所要時間は30分から40分程度です。
やるかやらないかは、施主の判断に委ねられています。実施率は地域や世代で差がありますが、近年は簡略化する、あるいは行わないご家庭も増えています。
それでも実施される方が多いのには、理由があります。ひとつは気持ちの区切りです。土地を前にして、家族と施工に関わる方々が一堂に会する機会は、この日をおいてほかにありません。もうひとつは、工事に関わる方々への挨拶の場になることです。現場監督や職人と顔を合わせ、「よろしくお願いします」と伝える機会は、その後の関係に効いてきます。
費用と、当日の流れ
費用の内訳は、おおむね次のとおりです。神主への初穂料(玉串料)が3万〜5万円程度、お供え物が1万円前後、祭壇や設営の費用(住宅会社が手配することが多い)が数万円程度。合計で5万〜10万円程度を見ておけばよいでしょう。
初穂料は、のし袋に「初穂料」または「玉串料」と表書きし、下段に施主の名字を書きます。神主が遠方から来られる場合は、別に「御車代」を包むこともあります。金額や慣習は地域や神社によって違いますので、住宅会社に確認するのが確実です。
当日の流れは、修祓(お祓い)、降神、献饌、祝詞奏上、四方祓、地鎮の儀、玉串奉奠、撤饌、昇神、直会という順序が一般的です。施主が行うのは、鍬入れ(くわいれ)と玉串を捧げる場面くらいで、あとは神主の指示に従えば問題ありません。事前に覚えておく必要はありません。
服装は、平服で構いません。ただし屋外で、足元は土の上です。ヒールの高い靴や汚れやすい服は避けてください。夏は日差し、冬は冷え込みへの備えが必要です。
上棟式とは
上棟式(じょうとうしき)は、柱や梁が組み上がり、屋根の一番高い部分(棟木)が上がった段階で行う儀式です。「建前(たてまえ)」とも呼ばれます。
地鎮祭が神事であるのに対し、上棟式は工事関係者をねぎらう意味合いが強い行事です。神主を呼ばず、棟梁が中心になって進めることも多くあります。
近年は簡略化が進み、行わないケースも増えました。行う場合でも、お神酒で乾杯し、ご祝儀と昼食を用意する程度の簡素な形が主流です。
費用は、ご祝儀として棟梁に1万〜3万円、職人に3,000〜5,000円ずつ、これに飲食代を加えて5万〜10万円程度が目安です。ただし、住宅会社によっては「ご祝儀は不要」と定めている場合があります。良かれと思って渡したことが会社の規定に反する、ということもありますので、必ず事前に確認してください。
やらない場合でも、上棟の日に現場を見に行くことは強くおすすめします。柱と梁が組み上がった状態は、その日しか見られません。構造がむき出しの姿を写真に撮っておくと、あとで壁の中を確認したいときの資料になります。
近隣への挨拶は、地鎮祭よりも大切
儀式そのものより、実務として重要なのが近隣への挨拶です。
工事が始まると、騒音、振動、粉じん、工事車両の出入りが発生します。数か月にわたって続くことですから、事前の挨拶があるかないかで、印象は大きく変わります。
タイミングは、着工の1週間前から前日までが目安です。地鎮祭の日にあわせて回るご家庭も多くあります。範囲は「向こう三軒両隣」、つまり両隣と向かいの3軒、そして裏の家。工事車両が通る道路沿いの家にも声をかけておくと丁寧です。
手土産は1,000円前後のタオルや菓子折りが一般的です。住宅会社の担当者も別途挨拶に回りますが、施主自身が顔を見せることに意味があります。これから何十年も隣人として付き合う相手ですから、この最初の一歩は丁寧に踏んでおいてください。
引き渡し後、引っ越しの前後にも改めて挨拶をすると、なお良い関係が築けます。
着工から引き渡しまで、施主がすること
工事が始まると、施主にできることは少なくなります。しかし、何もしないのが正解というわけではありません。
現場に足を運ぶ
可能であれば、週に一度でも現場を見に行ってください。写真を撮って記録を残しておくと、後々の確認に役立ちます。特に、基礎の配筋、構造材と金物、断熱材の施工、配管と配線——これらは壁で覆われると二度と見えなくなります。
ただし、現場は危険な場所です。必ず事前に現場監督へ連絡し、立ち入ってよいかを確認してください。ヘルメットを借りる、職人の作業を妨げない、勝手に触らない。この3点は守ってください。
職人に直接指示を出すのも避けてください。要望はすべて現場監督か営業担当を通す——これが鉄則です。直接伝えた内容は記録に残らず、行き違いのもとになります。
差し入れは必須ではない
「差し入れは持っていくべきか」というご質問をよくいただきます。義務ではありませんし、しなくても手抜き工事をされることはありません。
それでも持っていくのであれば、夏は冷たい飲み物、冬は温かい飲み物が喜ばれます。缶コーヒーやペットボトルのお茶で十分です。手が汚れているので、個包装のものが親切です。時間帯は10時か15時の休憩時に合わせてください。
確認と記録を残す
工事中に変更が生じたら、必ず書面で記録を残してください。「口頭で伝えた」は、あとで必ずトラブルになります。メールやメッセージアプリでのやり取りでも構いません。日付、内容、金額の増減——この3点が残っていれば十分です。
引き渡し前の施主検査
工事が終わると、引き渡し前に施主検査(内覧会)があります。ここは遠慮せずに、細かく見てください。
確認するのは、壁や床の傷・汚れ、建具の開閉、コンセントとスイッチの位置と動作、給排水の水漏れ、換気扇の動作、収納の内部、窓の施錠、外構の仕上がりなど。図面と実物が合っているかも見てください。
気になる箇所には養生テープを貼って印を付け、リストにして担当者に渡します。引き渡し後の補修は日程調整が必要になるため、この段階で指摘しておくほうが、双方にとって効率的です。
メジャー、懐中電灯、ビー玉(床の傾き確認)、養生テープ、図面のコピーを持参すると捗ります。2時間程度は見ておいてください。ご家族で手分けするのも有効です。
儀式は「やらなければならない」ものではない
最後に、あらためて申し上げます。地鎮祭も上棟式も、やらなければならないものではありません。ご家族の考え方、予算、日程の都合で決めていただいて構いません。
ただ、家づくりは何度も経験することではありません。土地に立ち、構造が組み上がる瞬間を見て、家族で記念に残す——その時間を持つこと自体に価値を感じる方は、少なくないと思います。
迷われたら、住宅会社の担当者に「このあたりでは、どのくらいの方がやっていますか」と聞いてみてください。地域の実情を踏まえた答えが返ってきます。
近年の傾向——簡略化と、その理由
地鎮祭も上棟式も、実施率は年々下がっています。理由はいくつかあります。
ひとつは、共働き世帯の増加で日程調整が難しくなったこと。もうひとつは、費用を建物や設備に回したいという判断。そして住宅会社側でも、工期の効率化や安全管理の観点から、簡素な形を勧めるところが増えています。
地鎮祭については、神主を招かずに住宅会社の担当者と施主だけで、簡易的にお清めをするという形もあります。費用は数千円から1万円程度。「何もしないのは気が引けるが、本格的にやるほどでもない」という方には、ちょうど良い選択肢かもしれません。
大安や仏滅といった六曜を気にするかどうかも、ご家庭によります。伝統的には大安や友引の午前中が良いとされますが、近年は日程を優先して決める方も増えています。ご両親の意向が関わることもありますので、必要であれば早めに相談しておいてください。
写真を残しておく
儀式をするかしないかにかかわらず、おすすめしたいのが記録です。
更地の状態、基礎、上棟、断熱材が入ったところ、そして完成。この5つの場面を写真に残しておくと、あとから振り返ったときに家づくりの記憶がよみがえります。
実用的な意味もあります。壁の中の配管や配線の位置を撮っておくと、将来リフォームをするときや、壁に何かを取り付けるときに役立ちます。断熱材や金物の施工状況も、記録として残しておく価値があります。
お子さまと一緒に、同じ場所で同じポーズで撮り続けると、成長の記録にもなります。
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